君に届ける最後の手紙
自転車で、JRの駅まで行き、そこからはいつもの帰り道とは違って、逆方向へと向かう。


俺はすごくワクワクしていた。


実は元々遠出をする事がない我が家。


旅行では近隣の県に行ったりするが、花見の為だけに遠出をすることはなかった。


初めてなのだ。


……初めて県内随一と呼ばれる千本桜をこの目にする事ができるのだ。


ワクワクというか、軽くトランス状態だ。


――電車に揺られる事、約15分。とうとう奴は姿を現した。


「す、すげぇ……」


電車の中からでも見る者を圧倒する迫力と美しさ。


流石だ。


今週の世界の車窓からは、ここからお送りしようかと思う。


……いや、違う。何が違うって、今日のメインは桜じゃない。


アサミに告白する事だ。


俺は目的を再確認しながら、電車を降りた。


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