君に届ける最後の手紙
「おばさん……アサミ、いるんだよね?」


「えぇ……顔、見てあげて。アサミ喜ぶわよ……」


目に浮かんだ涙を、こぼさない様に我慢しながら答える。


……アサミは、こんな俺の事を待ってくれているのだろうか。


そう考えながらも、アサミの入っている棺へと近付き、恐る恐る顔を覗き込む。


するとそこには、自分の目を疑う様な光景があった。


「何で……笑ってんだよ……」


……聞けば昨日、学校から家に帰る直前の事故だったらしい。


見通しが悪く、信号もない場所だったそうだ。


頭には包帯、透き通る様な肌には沢山の傷を作っている。


痛かっただろう……


辛かっただろう……


なのに、優しい笑顔が浮かんでいる。


すると、おばさんが俺に言った。


「由ちゃんが来る前にね、この子笑ったのよ……不思議だね。嬉しかったのよ」


そう言うとおばさんは、わっと泣き崩れたが、滲み始めていた俺の涙は


消えてしまった。


俺の時間は、そこから止まってしまったんだ。



< 222 / 233 >

この作品をシェア

pagetop