君に届ける最後の手紙
すると、そんな気持ちを察したのか、母が俺の発する心の叫びを代弁する。


「寂しい様な、悲しい様な……何だか恐い様な……アンタ、あれから一度でも涙流した事ある?」


そう言えば、一度も泣いていない……。


そう思い、俺が首を横に振ると……


「……?」


母は俺の頭を優しく抱き寄せた。


それに抵抗する力はない。


いや、むしろ母を受け入れていたんだ。


「由……どうしていいか解らなかったんだよね?どこで泣いていいか解らなかったんだよね?……自分の気持ちを言葉にしてみなさい。アサミちゃんもきっとそれを待ってる!」


待っているかどうかは解らない。


……でも、今、言いたい。


「……会いたい……アサミに会いたい……ずっと、好きだった……」


想いを口にした瞬間、俺の目から大粒の涙が零れる。


とめどなく溢れ出す。


「母さん……俺……」


「……ん?」


「明日、アサミにちゃんと伝えるから……自分の気持ち伝えるから……」


「そうね……」


……不思議な気持ちだ。


母の優しさに包まれ、身体から余計な力が抜けて行くのを感じる……。


俺はその日、初めて電気を消して眠る事が出来た。


俺の中で止まった秒針が、ゆっくりと動き始めたたんだ。


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