君に届ける最後の手紙
「なぁアサミ……息苦しくないか?」


俺は小声で話さなければならないこの状況に、窮屈さを感じていた。


「なに言ってんの?無駄話も出来ないこの状況だからこそ勉強に集中出来るんじゃない」


そんなもんか。


「へいへい……」


溜め息まじりにそう言うと、コンビニで買ってきたオレンジティーに口を付けた。


「ズッ……ズズズズッ……!」


ストローから音がもれると、カルト教団の白い眼差しが俺に襲い掛かる。


「はいはい、ごめんなさいねぇ……」


俺はとてつもなく小さな声でつぶやいた。しかし、アサミの言った通り、人間"勉強しかない状況"に置かれると、スイスイ頭に入ってくるもんだ。


とまぁ、いい調子で勉強を続けていると……


「由ちゃんの顔が変色するまで後10秒……後数えてて。アタシトイレ行ってくるから」


「はぁ?何だよ……」


とりあえず数えてみる。


「6……5……4……3……2……1……」


「隣……座っていい?」


「……なっ!……アサミさん?!」


俺はハッと気付いた。華のないアサミは華のあるアサミさんがここに来る事を知っていたのだ。


ナイスだ。ナイス過ぎる。草のアサミが華のアサミさんを届けてくれた。


アサミはそんな事も出来るのかと、すっかり感心してしまった。


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