君に届ける最後の手紙
家に戻るとアサミが心配そうな顔で駆け寄って来た。


「おばさんどうだった?」


「あぁ、過労が原因だってさ。4〜5日ぐらいで退院できるみたい」


「そっか……おばさん一人で頑張って来たしね。少し入院して、いい体休めになるよ!」


アサミが全身全霊俺の事を励ましてるのがよく解った。


「アサミ……俺決めたよ」


「……何を?」


「高校受験諦めるわ」


「え?由ちゃん何言ってんの?!今まで頑張って来たじゃん!それに、それじゃおばさんだって……」


「いいんだ。俺の学費の為に母さんが苦しむなら、高校なんか行かねぇ」


「ふぅ……そう。ま、それはおばさんとよく話し合いなよ。アタシは絶対おばさんを苦しめる事になると思うけどね」


アサミはそう言ったが、俺はそうは思わなかった。


「俺が母さんを苦しめる?俺と母さんをいつも苦しめんのは父親だよ」


アサミにこんな話しをするつもりはなかったが、話し始めると、塞きを切った様に想いが溢れ出す。


「あの人は俺ら二人に何も残してはくれなかった。あの人さえ先に死んじまったりしなけりゃ、母さんだってこんな事にはならなかった……だから俺が母さんを助ける!」


俺は今、父親に対する怒りが心の奥にあることをハッキリと確認した。


俺はやはり父親を恨んでいる。


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