君に届ける最後の手紙
それから俺は毎日、母親の見舞いに足を運んだ。すると、先生の言った通り、母は五日目の朝に退院して戻って来た。


その日は日曜日で、学校も休みだった。


「由、そう言えば毎日来てくれてたけど、ちゃんと勉強頑張ってたの?」


と、突然母が切り込んで来た。俺は返事に迷ったが……


「母さん……俺、受験やめる。卒業したら働くよ」


すると母はさすがに驚きを隠せずにこう言った。


「アンタ何言ってるの?母さんの事気に掛けてそんな事言ってるんじゃないでしょうね?そうなら怒るよ!」


「だって、先生も言ってただろ?過労だって。だったら俺も母さん助ける為に働くよ!」


「あのね、体の心配してくれるのは嬉しいけど、高校の学費は私がなんとかするから、高校ぐらいちゃんと行きなさい!……ったく、アンタを中卒になんかさせたら父さんに顔向けできないわ」


「……母さんはいつも父さん父さんって言うけど、その父さんが早く死んだりなんかしたから俺らがこんなに辛い思いするんじゃないのか?!今まで貧乏してきたせいで欲しい物も買えずにいたし……ハッキリ言って何も遺してくれなかったあの人なんか、父さんって呼ぶ事すら嫌なんだよ!」


「……由、父さんの事……恨んでるの?」


「うん、正直ね……」


……俺はとんでもない事を言ってしまった。


それは捉らえ方によっては、母の人生すら否定するような言葉だっただろう。


しかし母は複雑な表情こそ見せたものの、怒る事はせずにこう言った。


「そう……ま、恨むも恨まないもアンタの勝手だし……しょうがないわね。う〜ん……それはそうとして、入院費どうしよう……あ、父さんの部屋にヘソクリなんてないかな?由、探してみてよ」


「そんなもんあるわけないだろ?」


とか言いつつ、入院費は何とかしなければいけない。俺はとりあえず父親の部屋を漁ってみることにした。


何もしないよりはマシだろう。


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