君に届ける最後の手紙
俺は部屋に着くと、辺りを見渡した。


「相変わらず汚いな……」


父親の部屋は、父親が死んでから10年近くが経とうとしてるというのに、当時から全く片付けられていない。


この状態で一体どこを探せというのか……。


思い返せば、こうやってこの部屋をまじまじと見るのは初めてだという事に気付かされる。


「へぇ……なかなか趣味いいじゃん……」


壁にはヴィンテージ物のジーパンが掛かっていたり、随分使い古されたギターが立て掛けてあったり。


しかし一番目を惹かれたのは、机一面に貼られている写真。


その全てに俺と母、そして父親が写っている。どれもみんな良い顔をしている。でも全て俺の記憶にはないものばかり。


余計に悲しくなる。


しばらく部屋の中を探していると、少し大きめのオルゴールが目に入った。


「音……鳴るかな……」


オルゴールを明けて見ると、ゆっくりと温かい音楽が流れて来た。


「何だろう…懐かしい」


聞いた事もないその音楽に、俺は不思議と懐かしさを感じた。


よく見るとなかには手紙が入っている。


俺は気が進まないながらもその手紙を開いた……………………………………………………。


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