君に届ける最後の手紙
手紙を開くと、何やら長々しい文章が書いてある。


誰かに宛てたメッセージの様だ……。


「誰に書いたんだ?隠し財産の場所でも書いてあると助かるんだけど……」


だが実際はそうじゃなく、俺に宛てた物みたいだ。


母と出逢った頃の話……。


俺が産まれた事に対する喜び……。


父親として生きる事の大変さ……。


いつまでも俺の父親でありたいと言う切なる願いや、俺の名前に込められた深い意味……。


俺は今まで父親の事をただ恨んでいる様に思っていたが、本当はそうじゃないらしい。


俺は寂しかったんだ。


どこの家庭でも当たり前にいる"父親"という存在。


それが俺にはいない。


その愛情に触れる事が出来ない。


だから敢えて否定する事で父親に対する気持ちを抑えていた。


それが今、父親の愛情……気持ちに触れる事で開放された気がした。


大粒の涙が頬を伝う……。


俺は父に対して酷い事を言って来た。


父はこんなにも優しく、俺を想い続けてくれていたのに。


きっとこれは許される事ではないだろう。


……でも……


「父さんごめん……ホントにごめん……」


正直、俺と父の間に血の繋がりがないということには驚いたが、


もうそんな事はどうでもいい。俺は母の元に急いだ。


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