君に届ける最後の手紙
「アサミ、お前やっぱ家に戻るべきだよ」


アサミは複雑な表情を浮かべた。


「お母さん……なんか言ってた?」


「まぁ……俺もまだガキだし、大人の事情とか考えてる事ってよくわかんねーけど、多分お前が気を遣ってるって事が、おばさんにとって一番辛い事なんじゃねーかな」


「どゆ事?」


「ん、アサミが一番近くにいて欲しい、励まして欲しい人だって事だよ」


「って言っても、アタシにそんな力ないし……」


「力ないし……じゃねーの!おばさん、お前の為に自分の事犠牲にしてんだぞ!?それに対してお前がそんな感じだったら、おばさんは誰に支えてもらえばいいんだ!?一人ぼっちだぞ!?」


「…………」


アサミの目には涙が浮かんでいた。


「んん……ゴメ。ちょい言い過ぎた。でも、アサミは何もしなくていいんだと思う。ただ近くにいて、笑ったり泣いたり怒ったりしてやるだけでいいんだよ。それで報われるんだと思うわ」


「……たまにはいい事言うね」


アサミも本当は解っていたんだろう。でもそれは結局自分一人の見解で、自信を持てるものではなかったんだ。


「たまにはってのは余計だな。ま、早く行ったれ。今日明日ぐらいは一緒にいろよ。それでもキツかったらまた来てもいいし」


「由ちゃん……ありがと。アタシお母さんと話してみる!」


「おう」


アサミはロケットの様に急いで家を飛び出して行った。


そんなアサミを見て、俺は少し安心した。いつものアサミだ。


「ダダダダダダダ!!!」


今度は母親がロケットの様に階段を上がって来た。


「アサミちゃん帰っちゃったの?!」


「あぁ……?」


「天ぷらそば作ったのにぃ!!!」


……この人は……。


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