君に届ける最後の手紙
しばらくして、午後の授業も始まろうかという頃、ゲンキが戻って来た。


「今度は話せたか?」


と、俺が聞くと、ポカンと口を半開きにさせ、ゲンキは言った。


「あぁ……話せたよ」


「お?どんな話しよ。ガラにもなく趣味の話しとか?」


面白がってそんな風に聞いてみると、ゲンキはとんでもない事を口にした。


「……告った」


告った……へぇ……あぁ、この子は本当のバカなんだ。


って思う。


「バ〜ッカ……お前は……。まぁ、今回で勉強しただろ。急いだら失敗もするさ。元気出せよっ!」


「付き合う事になった……」


「あぁ……へぇ……………………………………はぁっ?!」


なんかの間違いだ。おかし過ぎる。


だいたい話しすらした事ない二人が、突然の告白から付き合い始めるなんて……しかも数分の間で。


俺はそれを信じきる事ができず、半信半疑のまま授業を受け続けた。


しかし、部活の時間になるとそれが紛れも無い真実だという事を知る事になる。


グラウンドでゲンキが良いプレーをすると、すかさず陸上部の方から飛んで来る


「ナイスプレー!カッコイイぞぉ!」


という声。それに対してゲンキも、アサミに向かってグラブを上げ


「おぅ!」


なんて返事をする。やはり事実だった。


人の気持ちなんてわからないもんだ。



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