君に届ける最後の手紙
「んじゃ、受験頑張れよ」


「ちぃっす!」


良かった。監督のお陰で間に合ったようだ。


九死に一生スペシャルだな。それにしても……


「でけぇ……どこまでが敷地なんだ?」


農業高校だけあって、周り一面見渡すかぎり田畑が広がっている。


まだ受験すら受けていないのに、入学するのを想像し、心が高陽していく。


「やっぱ俺好きなんだな、こゆの。と、こんな事してる場合じゃねーな」


広い敷地をさまよいながら、やっとの事で教室にたどり着いた。


「おっ?由じゃん!」


昔同じ少年野球チームでプレーしていて、半年前の県大会で敗れた附属中のピッチャーだ。


「おっ?タクヤじゃん。なんでこんなとこ受けんの?もっと野球強いとこあんじゃん。私立とか」


「あぁ、あんま強いとこ行ったって面白くねーし。それなら弱いチームを強くしたい」


なるほど、こと野球に関しては、昔から向上心の絶えない男だ。納得できる。


ガラガラ……


戸が開く音と共に、試験官が入って来た。


「お?いよいよ試験開始だな」


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