君に届ける最後の手紙
そして二日後、とうとうこの日がやってきた。


卒業式、まぁどこの学校も同じ様なもんだろうが、校長の長ったらしい祝辞を聞き、卒業証書の授与。


閉会の挨拶が終わると、「カノン」と共に退場。


一通り式を済ませ、教室に戻ると、担任や生徒数名が泣きだしたりする。


「ん?なんだこの気持ち……」


本当はそれどころではないはずだが、周りの雰囲気に飲み込まれ、何かこう込み上げる物がある。


「由くん。何だか寂しいね……」


となりに座ってるアサミさんが切ない声で言う。


「だね。今日で卒業か……」


なんてつぶやき、切ないアサミさんの顔を見ると、俺の思考回路は完全にストップする。


うわぁ……ヤバイな。


「あ、ところで由くん。今日教えてくれるんだよね?」


「あ、あぁ!そうだったよね!ハハ!ハハ……ハァ……」

正直言って、今日告白する自信は全くない。が、時間は刻一刻と過ぎていく。


とうとう下校の時間となり、俺に残された時間もあとわずか。


下駄箱の前でしどろもどろしていると、ゲンキンな声が飛んでくる。


「由ちゃ〜ん!もう告った?!」


「バカ!声でかいぞ!……まだだよ……」


「まだ……って、もう時間ないじゃん!あ、ほら昇降口の前にアサミちゃんいるよ!」


「いや、やっぱ無理」


「無理なんて言ってないで行きなさい!」


「えぇ〜?でも……」


「もうじれったい!はよ行け!一生後悔するよ!てか蹴るよ?!」


蹴られるのはいやだ。こうなりゃヤケクソだ。


「ん〜……あぁっ!ちくしょう!アサミさ〜ん!!!」


「ふぅ、やっと行ったか。頑張れ……野球小僧……」


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