君に届ける最後の手紙
「アサミさん!待って!……ハァッ……ハァッ……」


「どうしたの?そんなに慌てなくても待ってるよ?約束したもん」


−走って損した……−


「あのさ、俺……ハァッ……ハァッ……フゥゥゥ……」


息を整え、アサミさんの顔を見上げると、さっきまでストップしていた思考回路が急速に回転、ショートしそうだ。


やっぱアサミさんは可愛い。


「おおおれおれおれお……」


ダメだ。舌が回らない。


「?」


アサミさんも不思議そうな顔でキョトンとしてる。


「お、俺……俺の好きな人はアサミさんです!三年間ずっっっと好きでした!……じゃっ!」


と言うと、校門で待つアサミとゲンキの元に全力で走り出した。大事な事を忘れて。


「ちょっ……ちょっと由くん」


と、言っていたかどうかは定かではないが、言ってたに違いない。


しかし、俺の耳には全く届かなかった。


「ハァッハァッ……アサミ!俺やったよ!ちゃんと言えた!」


「そう!良かったじゃん!で、結果は?」


「は?結果?……あ」


「あ……じゃねーだろ。それを聞かないでどーする」


ゲンキは完全に呆れかえっていた。


そりゃそうだ。返事を聞かない俺がどうにかしてる。


「あ、でもアサミちゃん来たよ!ほら!ちゃんと返事聞きなよ?アタシらあっちで待ってるから」


「お、おう」


アサミさんがゆっくりと向かって来た。


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