君に届ける最後の手紙
アサミさんは明らかに複雑な表情をしていた。


「あ、アサミさん……さっきはごめん。返事、聞かせてくれるかな……?」


「うん。由くん、あのね……」


……ごくん……


緊張が俺の身体を支配する。


「私……由くんとは友達でいたいな……ごめん。じゃ、またね!」


ドォォォォォォォォン!!!……そんな音が聞こえた気がした。


俺はゆっくり、トボトボとアサミ達のいる方へと向かった!


「おぅ!どうだった?OKだったろ?……ん?違うのか?」


「……フラれちゃいましたよぉぉぉだ……」


「は?だってアサミさんて……なぁ?アサミ」


「うん……両思い……のはずだよね……」


「は?……はぁっ?!」


「……逃げたからだな……」


「……逃げたからだね……」


ハモり具合が妙にイラッと来た。そして目には熱い物がじわっと。


「あぁあぁ、ゲンキくん。ちょっとあっち行ってて!」


「お、おぅ……」


「ぐ……なんでおであどどぎにげだでぃでぃだんだどう……(何で俺あの時逃げたりしたんだろう)……」


するとアサミは幼い子供をあやす様に、俺を抱き寄せ、優しく頬を合わせて言った。


「だ〜いじょぶ。由ちゃんはアタシがいつか貰ったげるから……ね?もう泣かな〜い」


なんか凄く恥ずかしかったが、それ以上に嬉しかった。


「……ごじゅうでんごだ(50年後な)」


それは、失恋とは痛い物だと初めて知った中学三年。三月の出来事だった。


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