君に届ける最後の手紙
俺はアサミに引っ張られるまま、あるところに向かっていた。


「由ちゃん!次あれね!」


「あぁ……あれかぁ……拒否とかは出来ないわけですよね?」


「はい!そうですよ!」


「……ですよね……」


近くにあった席に座ると、アサミは悲しそうな顔で話し始めた。


「由ちゃん……アタシ淋しいよ」


「ん?何で?」


「何でって……由ちゃん入学したら寮に入るでしょ?なかなか会えなくなるなぁって……」


確かに。言われてみれば、ずっとつるんで来たアサミやゲンキと会えなくなるのはちょっと淋しい。


が、


「なんか随分高いところに来ましたね……」


「もう、それどころじゃないでしょ!由ちゃんは淋しくないの?」


いや、逆にそれどころじゃない。


「俺だって淋しい……よぉぉぉぉぉぉぉぉ!ぬぉぉぉぉぉぉぉ!」


アサミは何やら涼しい顔をしながら喋っているが、それを聞いてる暇はない。というか物凄い風の音で聞こえない。


その乗り物から降りると同時に、強烈な吐き気をもよおした。


「うっ、うげぇ……気持ち悪」


物凄い乗り物だ。ジェットコースター……。


しかし、未だに喋り続けてるアサミはもっと凄い。


でもまぁ、強烈な体験のお陰で失恋の思い出を少しだけ忘れる事が出来た。


「アサミ、ゲンキ、ありがとう」


俺は、いい友達を持って幸せだ。


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