君に届ける最後の手紙
さて、入学・入寮前日になり、母親がこんな事を話し始めた。


「なんか淋しくなるね」


ここ最近よく"淋しい"という言葉を聞いてるような気がする。春とはそんな季節なんだろうか。


「あぁ、一日二日の話じゃないからね。俺もホームシックになるかも」


なんて言うと母親の目に涙が浮かぶ。


「あんたがいない間、どうやって暮らせばいいのかしら……」


「う〜ん……母さんも今まで俺の世話してきて遊ぶ暇もなかったろ?少し羽伸ばせば?」


しかし、俺の世話をする事自体が母親の幸せだった様で……


「それが1番淋しいんだよぅ……うっ……うっ……グスン」

まだ入寮すらしていないのにこれだ。相談する相手は一人しかいない。


「あ、アサミ?由だけど……」


「はいは〜い。どしたぁ?」


「あのさぁ、俺明日から寮だろ?たまに母さんの事見に来てやってくんないかな」


「あぁ〜、おばさん淋しいだろうね」


「うん。今まで子育てで忙しくて、父さんが死んだ事の淋しさなんて感じる暇も無かったろうから」


「その反動があるかもしれないね。……うん!たまに会いに行くよ!」


「わりぃな。礼はするからさ」


これで少しは安心出来る。


明日から新しい生活のスタートだ。


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