君に届ける最後の手紙
家に着き食事を済ませると、俺は近くの公園に向かい、いつもの様にバットを振りを始めた。


すると、なぜかブランコにアサミが座っている。


「また練習?さすが野球バカ」


少しイラっとしたが、冷静に疑問を一つ、投げ掛けた。


「……お前、ゲンキの事好きだったのか?」


「ううん、違うよ」


「じゃなんで付き合ったりしたんだ?」


「……あたしね、本当は他に好きな人いたんだけど、その人は好きな人がいるみたいだから諦めた」


他に……好きな人がいたのか。


「それに、やっぱ男の子に好きだって言われたら嬉しいもん」


「……そっか」


まぁ経験の薄い俺でも、それは何となく解る気がする。


「ゲンキ君、由ちゃんには感謝してるみたいだよ。由ちゃんが応援してくれたから頑張れたって。アンタら、いい友達だね」


俺はその言葉を聞いて少し安心した。


安心すると、不思議と自分の心が素直になる。


俺はあの時、寂しいと感じていた。


今日感じたあの寂しさは、二人が付き合う事で、小さい頃から付き合って来た二人の友達が遠くに行ってしまいそうな、そんな不安からだったのだろう。


しかし実際は違った。友達の彼女は友達であり、友達の彼氏はやはり俺にとっても友達だ。


俺は初めて、少し寂しがりな自分に気が付いた。



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