君に届ける最後の手紙
今は自分のチームが敵陣にボールを持ち込んでいて、うまくすれば勝ち越し……という状況だ。


このチャンスはモノにしたい。と……


「アレ?俺フリーじゃん。」


あんまりサッカーは得意じゃないが、今パスされれば決める自信がある。


しかし残念な事に、今ボールを持ってるヤツの名前が出てこない……。


「え〜と……なんだっけ……佐藤じゃないし、鈴木でもない……そ〜いや、アイツ肌黒いな……黒……黒……」


マズイ。このままではチャンスを逃してしまう。


こうなりゃ仕方ない。


「黒……黒……ク……ク……クロマティ!」


「…………………………」


グラウンド内は静まりかえったが、あっけに取られている相手を尻目にクロマティから最高のパスが来た。それでそのまま……


ボン!


「やった!決まった!」


試合を決定着ける一発だ。


歓喜に沸き返るチーム内。が、そうでもない男が一人いた。


「由君……俺、クロマティじゃ……」


「あぁ、ごめんごめん。ほら、入学したてでパッと名前が出て来なかったんだ。ホントにごめんな?クマガイ」


あ、クマガイだ。そうだそうだ。


「由君……ひどいよ……」


それからずっと、彼がクロマティと呼ばれ続けた事は言うまでもない。


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