君に届ける最後の手紙
「んじゃゲンキ、屋台でも見に行くか!」


「おぅっ!タコ焼き!焼鳥!お好み焼き!」


「ダメダメ!ゲンキはアタシに酒注ぐの!アサミちゃん、由と一緒に行っといで!」


「はぁ〜い!」
「へ……へい……」


「由ちゃん行こ行こっ!」


「お、おう。……ゲンキ、可哀相に。半日も場所取りした上に酒注ぎか……」


「まぁ、おばさん、ゲンキ君の事お気に入りらしいしね!……あ!タコ焼き屋さん発見!」


「おぅ。並ぶべ」


「うん。そーいえば由ちゃん、向こうの生活はどう?」


「ん〜、牢獄だな。テレビは食堂にしかないし、電化製品一切持ち込み禁止だし」


「えっ?CDも?」


「もち」


「ドライヤーも?」


「当然」


「信じらんない!最悪だねっ!アタシ生きて行けないよ……」


「ま、多少慣れはあるけどな」


「へぇ……で、恋愛事情はどうなのよ?」


「あぁ、何か俺の事好きな人居るらしいんだけど、それが誰なのか解らないんだ。変な話だろ?」


「……へぇ……あ、そ」


「ん?何?俺、何か変な事言ったか?」


「別にっ!そりゃあね、高校生にもなれば恋もするわよねっ!アタシだって憧れてる先輩いるしぃ!」


アサミが何故か膨れっ面でそう言うと、俺まで何か腹が立って来た。


「何だよ……別にアサミの恋愛事情聞いてないし」


「あぁ、そ・う・で・す・か!フンッ!」


「あの、お客さん……」


「タコ焼き二つっ!」
「タコ焼き二つっ!」


「あいよ。千円ね!」


「はいっ!」
「はいっ!」


「俺が払うよ」


「アタシが払うよ」


「俺が払うって!」


「アタシが払うって!」


「じゃ……半々で……」


「そ……そうだね……」


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