キミのいる世界で
第一章
「今日で、ちょうど百年目だ」
カレンダーの印をみた私は、ポツリと声を漏らす。
それは誰に聞こえるでもなしに、窓の外へと溶け込んでいった。
視界に映るのは、煌びやかな光が描く放物線と大きな音。お祭り騒ぎとはまさにこれを言うのだろう。
この世界で迎えるお祭りは、もう何度目か。
外から聞こえる楽しそうな声や、砂糖菓子のような甘い香り。少しだけ下を向き、小さく笑ってみた。
「なんで、こんなに切ないんだろう」
きつく握り締められた左手には、シルバーの指輪が光り輝く。そこにポタリと落ちた雫は、地面へとゆるやかに落下していった。
小さな染みになった雫も、まるで幻だったかのように消えていってしまう。
「――何か大切なことを……忘れている気がする」