キミのいる世界で
冷静に考えられたのはここまで。
次の瞬間。信じられないような音と共に、吹き飛ばされてしまうほどの爆風が起こる。
ふわりと浮いた体は、間もなく地面に激突。鈍い痛みが体中を駆け巡った。
すぐさま体勢を取り直し、急に静まった中庭を見渡してみると、ボロ切れのようになってしまった黒いローブが視界に映る。
「そんな……!?」
急いでその場に駆けつけてみれば、微動だにしないフーリオ。
傷ついてしまったその姿は、あまりにも痛々しい。呼吸をしているか確かめるべく耳を近づけてみれば、微かに聞こえる呼吸音。
気絶しているだけのようで、ほっと胸を撫で下ろした。
けれど、すぐさま生き残っていた兵士達が私達の周りを取り囲む。
「この男は、危険だ! 早く離れろ!」
そんな怒鳴り声が、すぐ側で聞こえたかと思えば乱暴にその場から引き離される。
その場に座り込んだ私を尻目に、驚くほどの早さで兵士達に拘束されたフーリオは、引きずられるようにして監房へと運ばれていった。
その間、1分もあっただろうか。
目まぐるしく変化する様子に、軽く目を回しながらも立ち上がると。少し遠くにいたエヴァン様が急いで近づいてきた。
「大丈夫ですか!? 先ほどは危ない目に遭わせてしまい申し訳ありません。……怪我などはしていませんか?」
心配そうに覗き込むエヴァン様とは逆に、私は全くと言っていいほど無傷。
その様子に驚いたのか、彼は小さく感嘆の声を上げた。
こんな奇跡的な出来事は全て、フーリオが私を庇うようにして現れたから。
なぜこんなことをしたのだろうか。考えれば考える程に分からなくなるフーリオの存在に、頭が痛くなりそうになった。