キミのいる世界で
――……
先ほどの騒がしさからは一変して、随分と静かな夜。
私は『新人隊員指導係』に呼び出されて、長すぎる廊下を歩いていた。
説教だろうか。それとも、処罰か何か?
とりあえず、耳が痛くなるようなことであるのは間違いない。ため息を三回ほどついたくらいのところで、部屋の前までたどり着いた。
やけに装飾が過剰なドアを目の前に、ノックを三回すると部屋の中から弱々しい声が聞こえてくる。
「は、入りたまえっ」
部屋へと足を踏み入れた後も気は抜けず、一礼してから顔を上げると。たぷたぷとしたお腹を揺らしながら、指導係が近づいてきた。
眉間や額に深く刻み込まれたしわを見上げて、黙りこくっていれば、急に声を荒げられる。つばが飛んできそうな勢いで、思わず顔をしかめてしまったのは秘密だ。
「さ、先ほどはあんな事件があったので言えなかったが! き、君のした行為は我が『マギ討伐隊』を愚弄する行為じゃぞ! よ、よって君には処罰を与えるっ!」
「処罰……?」
どもりながらそう告げる指導係の言葉に、疑問符を浮かべれば、邪悪な笑みを見せ付けられる。
そしてすぐに、自分の書斎のほうへと移動したかと思えば。ちょいちょいっと、右人差し指で手招きされた。それに答えるようにして近づけば、何かの書類を渡される。
『監房監視係』
書類にはそんな言葉が記されていて、その下にはずらずらと小難しい文字の羅列。
何となく、それの言いたいことが想像ついてしまって、口を開こうとすれば。それを遮るかのように、冷たい鍵束を渡された。
どうやら私の最初の仕事は、監房の管理のようだ。……けれど、なぜこれが処罰なのだろう。