キミのいる世界で
監房へと続く螺旋階段を進むにつれて、少しだけ息苦しくなる。注意深く周りを見れば、あちこちに何かの文字が刻まれていた。
魔法使いを閉じ込める監房というからには、弱らせるための呪文か何かなのだろう。
人間にも効くなら相当、そう思いながらも軽い眩暈を覚え、更に下へと歩を進めた。
不気味な程に閑静な地下牢。唯一聞こえるのは、天井部分から滴り落ちる水音のみ。
今のところ、収容されている人数は三人ほどらしく。その内の一人がフーリオ・クレイントンだった。
他の二人は、どこかでヘマをしてしまった魔法使いらしい。だいぶ弱っているのか、私が檻の前を通っても、何の関心も示さない。
やっと最後の檻の前までくると、そこには片膝を立てて座っているフーリオ・クレイントン。
私がいる場所でチラつくオレンジ色の光とは対照的に、決して届かない場所にある小窓から覗く月光に照らされる姿は、やけに人外な雰囲気を醸し出していた。
そんな様子を暫く眺めていると、彼はゆっくりと顔を上げる。
「――何か、用か?」