キミのいる世界で
男の人らしい低めの声が、まったくの無音だった場所に静かに響き渡り、ビクッと肩を震わせてしまう。
「い、いえ。ごめんなさい」
上手い言葉が見つからず、何故か謝ってしまうと彼は小さく笑い声を漏らした。そんな様子が私みたいな一般人と全く変わらず、思わず魔法使いなのか疑ってしまうほど。
明日、処刑されてしまう人なのに――
……ああ、もうそんなことを考えるのは止めよう。
心無い考えに嫌気が差しながら、その場に座り込むと、彼は驚いたように首を傾げた。ちょっと話してみたい、そんな思いからの行動だ。
「あの……昼間は、助けてくれたんですか?」
いきなり核心に触れるような問いかけ。あまりにも不躾だっただろうか。少し不安駆られて、膝を抱えると彼は肯定の意を示した。
それに対して、何故?と再び問いかけると再度口を開くフーリオ。
「キミがここに来る前、男の子に出会ったのは覚えてるかい?」
皮手袋をはめた左手の人差し指を上へ向けながら、そう聞いてくる彼の言葉で、あの少しませた男の子のことが脳裏に浮かんだ。
そして、それと同時に出来れば考えたくない仮定が次々と頭の中を埋め尽くしていく。
「――まさか、あの男の子……あなたなの?」