キミのいる世界で
「そんなことじゃない! オレはただキミを守りたくて、それで……」
声を荒げたかと思えば、段々小さな声になってしまうフーリオ。何だか聞いているこっちも恥ずかしくなってしまい、ただ無言で顔を膝にうずめた。
沈黙がここまで辛く感じたのは初めてだ。
本当に、この人は感受性豊かなんだと悟る。……良い人、なんじゃないだろうか。
ふと、そんな考えが過ぎった。ちろりと顔を上げて彼の様子を見れば、左手を額に当てて唸っている。なんというか、面白いかもしれない。
「何で、こんなところに来たんですか……?」
来なければ捕まらなかったのに――という言葉は、のどの奥で押さえておいた。これじゃあまるで、彼が捕まらなければ良かったと言っているみたいだ。
自分自身、本心がどうと言われれば揺らいでしまうことに気付き、口を開いた後はただじっと答えを待つことしか出来ない。これ以上何かしゃべれば、余計なことを口走ってしまいそうで怖かった。
「話せば長くなるが、簡単に言ってしまえばそうだな……。復讐、だろうか」
フードを被っているため、表情はよく分からないけれど。その声音は、少し切ない。
それ以上踏み込むのはいけないと思い、固く口を閉ざしていると、彼は独り言ともとれる言葉を続ける。
「けれど、まぁ――オレは明日処刑される。……仇討ちは失敗、だな」
ハハッ、と乾いた笑い声を上げるフーリオ。
その言葉の真意は分からないけれど、私の悪い癖が出てしまうには十分だった。
私はこの人を助けたい。
そう、強く思ってしまったから。