キミのいる世界で

「そんな悲しいこと……言わないでください」

 気付いたらそんなことを口走って、檻の直ぐ近くまで来ていた。手に握られた鍵束は、カチャリと音を立てる。

 すると、彼は何を思ったのかスクッと立ち上がり、こちらへ近づいてくる。

 無音のまま近づく存在は、やはり恐怖以外の何モノでもなく。無意識のうちに一歩後ずさろうとすると、鉄格子の隙間から出てきた手に腕を拘束されてしまう。


「オレと、一緒に逃げてくれるのか――?」

「……え」

 真剣な声音のまま紡がれる言葉。ほぼ瞬間的に声が出てしまった。そういえばそうだ、彼を逃がしたら私が全ての罪を償うことになる。

 軽率すぎる自分の言動に泣きたくなった。けれど、一度掴んだその手は離れることがなく、ますます力を増す。

 ぎりぎりと音がするくらいに力を込められ、顔をしかめるとそれはパッと瞬時に離れた。けれど、それと共に彼は世界の終わりのような表情になってしまう。


 ……短かったな、私の17年間。
 そんなことを思いながら空を仰ぎ、赤く鬱血してしてしまった腕を押さえつつ、私はある交換条件を出すことにした。



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