キミのいる世界で
静かな通路をただひたすらに、どれくらい歩いただろう。
やっと門の近くまで辿り着いた私達は、ほっと胸を撫で下ろした。
すぐにでも出ようとする私とは裏腹に、右手でその行動を制止させるフーリオ。
注意深く移動する視界には、何らかの罠でも映っているのだろうか。
「――見えるかい? 不審者が近づけば、攻撃するように術式が施されてる」
彼が指差す方向には、うっすらと光る謎の文字。これが術式とやらなのだろう。
ではどうしようかと振り返れば、隣にいたはずの彼は忽然と姿を消していた。
薄暗い中で人を探すのは至難の業。それでも必死に探そうと試みれば、不意に手を引かれた。
「いいものがあった。おいで」
ニヤッと不敵に笑うその姿に呆れつつも、手を引かれるがままに付いていけば、彼が指差すのは地下水路へと繋がる穴。
冗談だと願いつつ、顔を覗き込めば至って真剣な顔をしていて、今度こそ泣きたくなった。けれど、早く何処かへ移動しなければ何もかもがパー。
何のためらいもなくはしごを降る彼に続き、私もまた錆び付いたはしごに手を伸ばした。