キミのいる世界で
「まずは……格好をどうにかしようか。二人ともこんな姿じゃ、目立って仕方ない」
私と自分を交互に見て、苦笑いをした彼。それに対して、私自身も苦笑いするしかなかった。
彼の姿といえば、ルシフェルに居た時から目立って仕方なかった黒いローブ。私の格好といえば、あまりにも場違いな『マギ討伐隊』の制服。
絶対に隣り合わせちゃいけない関係を見事に表す服装であり、滑稽で仕方ない。
「これじゃあ、捕まえた者と捕まった者ですね」
クスリと小さな笑い声を漏らし、厚手の布で出来た服を引っ張って見せれば。彼もまた、小さく笑みを溢す。
「確かに、それは言えてるな」
脱走して数時間しか経っていないというのに、こんなにも楽しくして居られるのはフーリオという存在が心強いからだろうか。
まだその素顔すら見たことがないというのに、己の前を歩く背中が逞しく感じた。