キミのいる世界で
何だか少し嫌な予感がして、ちょっとだけ後ずさると。後ろは海になっていて、落ちそうになってしまう。
けれどそれを、ルベルに抱きかかえられる形で助けられる。余計に近くなった距離。
離れるどころか近くなっていく二人の距離に、今度こそ危機感を感じた。
「ちょ、ちょっと! ルベルっ、離してってば」
「ん~? どうしよっか」
大人な笑みを見せ付けられてタジタジな私は、茹蛸のようになっているはず。そうでなきゃ、熟れに熟れたりんご。
彼の前髪が頬に触れて、少しだけくすぐったいし、こんなにも長い間この姿勢を続けるのは辛い。
「真っ赤になっちゃって可愛いな。キスしちゃってもいい?」
軽はずみな発言は本心なのだろうか。
恥ずかしいけれども、色々な危険を察した私は、張り手をかます予定の右手を用意しておいた。
――と、その時。
私がよく知っている声が聞こえてきた。しかもこの声は、『マギ討伐隊』に殴りこみに来た時の声音。
首が折れんばかりのスピードで声のする方に顔を曲げれば、恐ろしいほどに顔を強張らせたフーリオが見えた。