キミのいる世界で

「お~っと、行っちゃっていいわけ? フーリオ向けの情報があるんだけどな~」

「情報?」

 人差し指をひらひらさせながら、ルベルはいつもの調子で語りかける。興味を引き付ける話し方というのは、彼の常套手段か何かなのだろうか。

 まんまとその手法のカモにされた私は、フーリオよりも先に問いかけた。途端に、フーリオの機嫌が悪くなったのは言うまでもない。


「そ、エヴァン様の秘密情報ってな感じ。聞いといたほうが良いと思うぜ?」

「……嘘だったらどうなるか分かってるな?」

 フーリオはしばらく考える動作をした後、鋭い眼光でルベルを睨めつける。視線の先に私がいないことだけが、唯一の救いだ。

 けれど、ルベルはそんなものに物怖じする気配もなく、あっけらかんとした様子。

 鋼鉄の心臓でもしているんじゃないか。見ているこっちの方がひやひやだ。


「まあまあ、リラックスしろって。じゃ、下に行くか? もうオレ、腹へって死にそー」

 さりげなく私の肩へ手を置こうとしたルベルを、フーリオは思い切り突き飛ばして更に私を側に寄せる。

 そんな様子に苦笑いをしたルベル。それを見て、私も少しだけ口元が緩んだ。


 まあとにかく、大事に至らなくて良かった。今言えるのはそれだけ。



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