キミのいる世界で

 底知れぬ実力をもつお兄さんに言われるがまま、下へと向かう私達はなんとも言えない雰囲気を楽しんでいた。

 ……最後の言葉は嘘である。


 下には酒場があり、お兄さんはカウンターへと移る。

 二人は以前もここに来たことがあるのか、何のためらいもなく一番奥のカウンター席へと腰を下ろした。

 お兄さんが手に持つのは、先ほどの大乱闘で使われたワインボトル。手際よく栓を抜くと、グラスにそれを注ぐ。

 用意されたのは二つ分。やはり見た目で未成年と分かってしまうのだろうか。

 少し恨めしく思いつつも、二人の前に出された飲み物を眺めることにした。


「あなたには、こちらを」

 私の恨めしい気持ちが伝わったのか、お兄さんはある飲み物を差し出す。

 照明のせいでよく分からないけれど、たぶんオレンジ色をした物体。お子ちゃま大好き、オレンジジュースだ。


「素敵なチョイス、ですね」

 嫌味を込めつつ、オレンジの味を口いっぱいに含む。やっぱり美味しいけれど、少しだけ複雑な気分。

 個人情報について深く触れないほうがいいと思い、二人から距離をとったのはいいけれど。どうにもつまらなくて、ジュースを飲むことだけに集中。

 どんな情報なのだろうか。

 頭ではいけないと思っていても、耳は二人のほうへと神経が過敏になっている気がした。




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