キミのいる世界で

「――ってなわけ。中々良い情報だろ?」

「……本当ならな」

 耳を象のようにしてそばだててみても、聞こえてきたのはそんなこと。

 行動が遅すぎたか。心の中でガックリと項垂れた。

 と、そんな時。フーリオが私の席へと移動する。黒いローブの男性は、やっぱり少し恐怖の対象だ。


「ねぇ、エマ。いきなり変なことを聞いて申し訳ないけど、王宮に入れそうな知り合いはいるかい?」

 何ともユニークな質問。けれど、質問している本人は至って真面目。

 すまなさそうに首を振るのが、私に出来る唯一の行動だった。ガックリと肩を落とすフーリオに、おろおろするばかりの私。

 一体何の話しをしたのか。ますます気になるな……。


「オレは"王宮に入れる知り合い"に入らないわけ?」

 重苦しい雰囲気を打ち破るように、小さくため息をついたフーリオの奥から、気だるそうに上げた手が見えた。

 とても失礼な話しだが、王宮にいそうな人には見えない。かと言って、この場面で嘘をつくようにも見えない。

 疑問符を頭の上で並べながら、ルベルの手を見上げていると、フーリオが積極的に口を開きだす。


「何でそんなことが出来る? 盗みに入ったりでもしたのか」

「失礼極まりないなー、騎士隊長の身分についてたりするルベルさんに失礼だぜ?」

「騎士隊長? またそんなことやってたのか」

「そ、二百年ぶりくらい? もう体が鈍っちゃって酷い、酷い」

 私が入っていけなさそうな会話がどんどん飛び交う中。注目すべき点を一つだけ見つけた。

 二百年? 二年の間違いじゃなくて?

 


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