キミのいる世界で
「あ、あの! 二百年って何のこと!?」
パンッとカウンターを軽く叩き、その弾みで腰を上げた。
一瞬静まった空間。互いに顔を見合わせた二人が恐い、恐すぎる。
「あー、そっか。見た目じゃ分かんねーよな」
苦笑いしつつ言葉を続けようとするルベルに、軽く身構えてしまうのは私だけじゃないはず。
どんな言葉が来ても驚かないように、心の準備をして次の言葉を待った。
「オレ、一応竜族だったりするわけ。ただいま千才くらい……だよな?」
まるで、おばさんが年をカミングアウトするくらいのノリで言われるのは、衝撃的すぎる事実。
自分の年も分からないくらい長い年月を過ごしているのか、フーリオに年齢を確かめる始末。
どうみても十代後半か二十代にしか見えないその外見に、固唾を呑んだ。
「ままま、待って。じゃあ……フーリオも千才、とか?」
左手を口に当てたまま、どもりっぱなしの私の姿は実に滑稽だろう。
それともあれか。二人からしたら、ひいひいひ孫でも見ている気分なのだろうか。
今まで信じてきたものや、日常が音を立てて崩れ去ったような気さえして、現実逃避したい気分になった。
「オレはまだそんなに年くってないよ。三百ちょい、かな」
「あっ、ひっでー! オレだってまだまだ若い方だぜ」
桁の違いすぎる会話に、私はただ乾いた笑い声を漏らすだけ。
もうこうなると、底知れない力を持つお兄さんも神とかそんな位置にいるのではないか。
十七年って案外短い、と改めて痛感した。