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それは1秒にも満たない短い時間のできごとだった。

天正寺 芳影が刀を振り下ろしてから、

・・・一瞬だった。



転がる生首、ざわめく民衆。

ただ呆然と立ち尽くす亜一(あひと)。


若干7歳にして、目の前に起こっている出来事が判断できなかった。

父が死んだ。それも息子が見ている前で。

そんな簡単なことなのに把握ができない。

このとき強く亜一が覚えている唯一のことは、

芳影が見せた背中の家紋。

蝶一文字(ちょういちもんじ)…これだけはなにがあっても忘れることはないだろう。



民衆は帰路を示している。

あざ笑う者だっていた。

他人のことだとこんなに冷たいのか…



ふいに亜一は父の顔を見た。

父は笑っていた。

一辺も曇らない悔いの無い顔だった。



「亜仙様… ありがたきお言葉、確かに頂戴致しましたぞ…」





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