トレードな同居人
ポチポチポチポチと携帯のボタンを押して画面に出てきた名前に恨みを込めて強めに通話ボタンを押す。
呼び出し音が鳴る中でそれでも落ち着かない私はソファーから立ち上がってクマのようにウロウロと動き回る。
『―はいはーい?』
「ちょっと眞子…あの部屋なんなの!?」
あまりにも間延びした眞子にイラッとしながら語尾を強める。
語尾を強める私にも大して同じる事もなくカラッと笑う眞子と、電話越しに聞こえる自分の恋人である赤羽 悠(アカバ ユウ)の笑い声にまたイライラしてしまう。
「部屋、勝手に模様替えするから。」
『駄目よー?あれお気に入りだし……それより、悠ってやっぱり面白いね。』
「は?悠?眞子、悠に会った事なんてなかったじゃん…」
過去を壊されて、正直すべてが疑心暗鬼になってしまっていた私は眞子の言葉の裏を嫌でも考えてしまう。
裏なんてないかもしれないのに…本当に嫌な女だ。
『え……んー…前に一回大学の門で会ってる。ね、悠?』
本当に楽しそうな眞子の声に、同じテンションで悠が返事をしているのが聞こえて、イライラはメーターを振り切ってしまう。