トレードな同居人
闇色をした瞳を見ながらぼんやりと昔を思い出した。
あの時も…こんな瞳をしていたっけ。
「言いたい事それだけ?」
「な、」
「詮索すんなって言わなかったか?それに…俺は眞子と真剣になんてこれっぽっちも思っちゃいねーんだよ。」
ガチャンと音を立てて床にたたき付けられた眞子の趣味であろう可愛らしい陶器の置物は見るも無惨にバラバラに砕け散った。
「じ…じゃあ……浮気してないって言いたいわけ?」
「は?浮気なんかじゃねぇし。
本気の女がいないのに浮気になんかならねーよ。」
「……じゃあ…私の時も?」
こんな事聞くつもりなんてなかったのに…。
本気でもなく、浮気でもない。
それを聞いた時にどうしても気になってしまったんだ。
あの時の私は透が大好きで何よりも大切だった。
ほんの少しでも同じ気持ちを持っていてほしい。
ただそんな願い。
「お前と付き合ってたなんて記憶ねぇな。」
「な…っ!」
「ヤラせてもくれないような奴、俺は興味すらねぇし。」
足元から何かがガラガラと崩れた瞬間だった。
私はあれが初恋だった。
初恋で、初めての恋愛だった。
でも…それは私の独りよがりだとはっきり言われた気分。
それでも、なぜか透を恨むなんてできなかったんだ。
本気も浮気も同じ。
浮気=本気
そんな考えの透が可哀相だとすら思ってしまった。