トレードな同居人
3話 火遊=裏切
足元に散らばった可哀相な陶器の置物を素手でかき集める。
その置物が今の私と嫌でも重なって見えてしまう。
「……いっ…」
ポタリ―と指先からフローリングに落ちた赤い血をボーッと見ながら、それでも置物をまるで狂ったようにかき集める私は目の前にいる透にどう映ったんだろうか…
「――…お前さ…帰れば?」
「…帰るってどこに。」
「実家だって近いだろ。だったら」
赤い血がフローリングにポタリポタリと落ちるのも気にせずに私は透を見上げて無理矢理に笑った。
笑えていたかはわからないけど、私が一番得意な作り笑い。
「実家?そんなものないわ。」
「は?何だそれ。」
「言葉通り。私には実家なんてない……。
これ、どこに捨てるの?」
そう、私には実家なんてないんだ。
でもそれに触れてほしくない。
だから…無理矢理話題を変えるようにかき集めた置物を透に見せた。
これを捨てて、少しでも持ち合わせていた"希望"なんて馬鹿げたモノも一緒に捨ててやるんだ。