トレードな同居人




洗面台で髪を整えてほんの少しだけお化粧をして、玄関で待ってる透のところまで歩く。




「お待たせ。」


「遅せーよ。」


「……ごめんなさい」




なんで私が謝らなきゃいけないんだ!なんて思いながらも謝ってしまうのはきっと私の悪い癖。

そんな私に興味なさそうにさっさと玄関を出てしまう透に出そうになるため息を飲み込んで、ショートブーツを履いて私も玄関を出た。




「お前、中華駄目だったよな?」


「……覚えてたの?」


「記憶力良いだけ。イタリアンで良いだろ?」




昔、透を追いかけ回してた時に一方的に言った。

『私、中華って駄目なんだ。でもイタリアンは大好きなの!』

聞いてなかったと思ったのに…ちゃんと私の話を聞いてくれていた透に嬉しくなった。




「にやけんな…気持ち悪い。」


「……やっぱムカつくわ。」




アパートを出て歩く透は私に合わせているのか一定の距離を保っている。
並んで歩けばさりげなく車道側を歩いてくれる。

このわかりずらい優しさはどうしてなのか、今の私にはわからない。



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