トレードな同居人
「旦那と二人でやってるお店でね、透くんは良く来てくれるお客様なのよ。」
どこかふわふわした雰囲気を持つ小夜さんに着いて透と二人でレストランの中に入れば暖かい暖色系の色の店内に外観と同じアットホームな感じで思わず頬が緩んでいた。
「小夜さん、俺いつもの。」
「はいはい、えーと…」
「あ…柊谷結菜です。」
「結菜ちゃん?可愛い名前ね、結菜ちゃんは何にする?」
ニコニコと笑顔の小夜さんに渡されたメニューを見る。
「生パスタと旬野菜のチーズソース…にします」
「あら、透くんと同じ。ふふふ…やっぱり二人はお似合いね。」
「小夜さん!」
「あらあら…」
透が声を荒げてもニコニコしてる小夜さんはある意味大物な気がする。
可愛らしいグラスに水を注いで、変わらずニコニコしたままカウンターの向こうに消えた小夜さんに私は苦笑いしてしまう。
「………」
「………」
「………よく来るんだ。」
「あぁ。」
二人になるとやっぱり会話が続かない。
小夜さんが注いでくれた水をちびちび飲みながら今座っている窓際の席から外をみた。
もうすぐ夏、木々の緑が太陽に反射して春よりも綺麗に見える。
会話の続かないこの時も外を眺めていれば悪くないかな、なんて思える。