トレードな同居人





小夜さんに見送られてレストランを出た後、また一定の距離を保ったままゆっくりと歩道を歩く。

空いた距離が寂しいと思ったのは私だけの秘密。




「こっからなら一人で帰れるだろ。」


「え?」


「まっすぐ帰れよ。」




あぁ、女か。

直感的に気付いてしまった。
でも、私にはそれをとやかく言う権利はないんだって昨日と今日で嫌ってくらいに思わされた。




「……子供じゃないんだから…ほっといてよ。」




返事も聞かずにさっさと遠ざかってしまった透の背中にポツリと呟いて、それでも言い付けを守る私はなんて馬鹿なんだろう。


少しだけ近づいたと思った距離は歩幅と同じように全然近づけてなんかいなかった。






その日、透は本当に帰ってこなかった。






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