お隣サマは運命の人

「何年振りだろ、ここに来たの?」




夏も終わりかけだというのに、時間の割にまだ明るい空を見上げて呟いた。



少し離れたグランドからは部活中の高校生の掛け声が聞こえる。



住んでいる街を見渡せるこの丘の近くには翔ちゃんと大地君の母校がある。



今は双子くんと緒方さんの学校。


この辺では結構有名な男子校。


文武両道という言葉がふさわしく偏差値も高いし、いろんな部活動ではいい成績を収めてる。


翔ちゃんがまだ高校生だった時、よく翔ちゃんと来たなぁ。


まだ小学生だった私は翔ちゃんの自転車の後ろに乗ってこの丘からの眺めを見るために連れて来てもらった。


この丘からの眺めもここで感じる翔ちゃんの高校の雰囲気も大好きだった。


でも中学に上がる頃には翔ちゃんから「俺も卒業したしあんまり行かないように」ってなんだか腑に落ちない理由を言われて、最近は来てなかった。


翔ちゃんとゆっくり話したかったし、それだと家じゃなんだか落ち着かないし、人がたくさんいるファミレスやカフェじゃなく、なんて考えたらここが真っ先に頭に浮かんだ。




「翔ちゃん、来てくれるかな?

逃げ出したこと怒ってても、来てくれるかな?」




不安な気持ちは心の中じゃなく広い空に吸い込まれた。







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