lose faith
先生は慌ただしく動き回っている…
診察台の下にバケツを置いた。
『少々、荒っぽいけど』
笑って言うと、波音にバケツの中に脚を入れて冷やす事を促した。
波音はゆっくり爪先から氷の中に沈めて行った…
『ウッ‥冷た…いっ』
始めこそ氷の冷たさに戸惑ったが足首の上辺りまで漬と段々と痛みが和らいで行った。
波音から少しだけ離れた所で佐野と先生が何やら話している…
波音はジッっと氷に沈めた足元を見つめていた…
どの位、時間が経ったのだろうか…
佐野が波音の頭をクシャッとなでる‥
『痛いか?』
『大丈夫です。』
佐野を見上げニッコリ微笑む。
そっか‥と微笑みながらもう一度、波音の頭を撫でた…
そろそろ時間だなっ…波音の前に白い二粒の錠剤と水を差し出す。
『痛み止めだから今のうちに飲んでおいて。』
先生は波音の前に椅子をスライドさせ、氷の中から脚を上げ、手際よく水滴を拭き湿布を貼り包帯を巻く。
『これは応急処置だから、早めに病院で診察を受けてください。』
『はい‥有難うございました。』