Iの漂流戦士
漂流、戦士






『〜♪♪♪』



夜の街を上空から照らし出す満月

時間は深夜2時


男は鼻唄歌いながら、おぼつかない足取りで歩いていた


人気(ひとけ)の少ない路地裏で壁にぶつかっては歩き、またぶつかっては歩き………



『〜♪♪♪♪』


鼻唄はさらに大きくなり、男は上機嫌の様子


酔いがまわって視界も霞む中、微かに見えた人影


その人影は満月に照らされ、男の10メートル先に立たずんでいた


ピクリとも動かない人影は、ただ真っ直ぐに男を見つめている

男は鼻唄を止めた


酔いのせいで視界も足も正常ではない筈なのに、男の顔は正常だった


いや、正常と言うよりは恐怖


-------これは夢か幻か

今日は飲み過ぎたかな?なんて自分に問いかける


でも、満月に照らされている人影は夢でも幻でもない


男はサァーと血の気と共に、酔いが冷めていくのを感じた

そして、静かな路地裏に絶叫が響き渡る




『うわぁぁぁぁぁ!!!!!』



男は知っていた


あの人影は幻ではない事を

あの人影は本物である事を



あの人影が殺人鬼である事を





< 1 / 526 >

この作品をシェア

pagetop