Iの漂流戦士
その頃の正義もまた、昼間は教員。夜は愛の手と二重生活をしていた
眠らない街、殿(しんがり)町で出会った一人の少年
彼の名前は“柿崎 隼人”
まだあどけない顔立ちの14歳の少年だった
隼人は殿町の街で仲間を作る訳でもなく、たった一人で漂流していた
何日もご飯を食べていないのか見えない路地裏で捨て猫のようにうずくまっていた
『ど、どうしたの!?大丈夫?』
パトロールしていた正義がたまたま見つけ、慌てて駆け寄ったのが最初の出会い
隼人は薄目を開け、息はしているものの瞳からは生気が感じられなかった
正義はこんなにひどい状態の未成年を見たのは初めてだった
もしかしたら事件や事故に巻き込まれたのかもしれない
そう思った正義は急いでポケットから携帯を取り出した
----すると、動く事のなかった隼人の手が正義の携帯に伸びる
『誰にも連絡しないで…大丈夫ですから。お願いします』
正義にしがみつくように、体を起こす隼人はブルブルと震えていた
(一体何が…………この子に何があったんだ?)
とりあえず携帯を閉まった正義は隼人を壁に寄り掛からせた
隼人に目線を合わせるように片膝を付きゆっくりと問いかける
『いくつか質問するから答えられるなら答えて』
その言葉に隼人はコクリと頷いた
『怪我をしている所や痛い所はない?』
『……大丈夫です』
『事件や事件に巻き込まれたの?』
『違います』
『連絡しないでと言ったのは君の事情?それとも別の事情?』
それを聞くと隼人は数秒黙ってしまった
次に隼人は『……家に……家に連絡されたくないんです』とうつ向いて答えた
その後正義はそれ以上何も問いただす事はなかった