Iの漂流戦士
隼人は正義が用意したスウェットを着て、髪の毛からはまだ水滴が溢れていた
こうして見るとやっぱり隼人はまだ幼い
正義のクラスの生徒より幼く見える顔立ちは、多分中学生ぐらい
隼人はスタスタと歩きご飯が並ぶテーブルをジッと見つめた
『あ…オムライス嫌いだった?』
使ったフライパンを洗いながら、正義が問いかける
隼人はブンブンと首を横に振った
正義は意外にも料理が上手かった
毎日とはいかないが、作れる日は自炊するし、家事もする
独身なのだから自分で料理ぐらい作れないと…と、たまに料理本を見る事もある
正義が作ったオムライスはふんわりと丸く、上に乗せた卵にはまだケッチャップがかけられていない
洗い物を一時中断し、冷蔵庫からケッチャップを取り出した
『なんて書く?』
当たり前のように聞く正義に隼人はキョトンとしている
『あ…あれ?ほら、好きなキャラクターとか、好きな言葉とか名前とか…』
慌てて説明するが尚、隼人は首を傾げていた
正義が小さい頃は、食卓にオムライスが出ると必ず母親が好きな言葉を書いてくれた
その影響なのか、こうしてオムライスを作るとなぜか何か書きたくなってしまう
『あ…別に何も書かなくてもいいんだけどさ、ごめんね。つい……』
正義はケッチャップの蓋を開け、適当にかけようとすると
『………じゃ…隼人で』
小さな声が耳に聞こえた
正義は優しく微笑み、歪(いびつ)な文字で“はやと”と書いた