Iの漂流戦士
隼人は椅子に座りオムライスを一口、口に入れた
正義も向かいに腰を掛け、内心ドキドキしていた
誰かに料理を作る事なんて滅多にないし、自分の料理が旨いのかも分からない
だからこそ、一番得意なオムライスを作ったのだが
そんな事を思っていると……ポタリとオムライスに何かが落ちた
正義がふっと顔を上げると『美味しいです』と言いながら隼人が泣いていた
ポタポタと流れる涙を必死に拭い、隼人は一粒も残さずオムライスを間食した
正義はこの涙の理由を知っていた
愛の手を通じて沢山の子供達と接してきたからこそ分かってしまう
“なんでも話して”
そう言って涙を流すのは話しを聞いてもらえなかったから
“大丈夫?辛かったね”
そう言って頭を撫でて涙を流すのは頭を撫でてもらえなかったから
“一緒に家まで帰ろう”
そう言って抱きしめて涙を流すのは抱きしめてもらえなかったから
涙には必ず理由がある
温かいご飯を出して涙を流すのは温かいご飯を出してもらえなかったから
誰かの優しさに触れて涙を流すのは優しくされなかったからだ