Iの漂流戦士
倉木の言葉通り、正義は隼人が話してくれるのを待った
隼人は心を落ち着かせるようにスープを飲み、マグカップを静かに置いた
それと同時にゆっくりと口を開く
『………俺家に帰りたくないんじゃなくて、帰れないんです』
その言葉が出ると隼人は吐き出すように全てを打ち明けた
隼人は父親と二人暮らしで赤磐市という場所に住んでいる
父親の名前は“柿崎 新造”
隼人が殿の街に訪れ、家に帰れない原因を作った男
隼人の父、新造はかろうじて無職ではないが定職には就かず、日々日雇いの仕事をしていた
酒癖も悪ければ女癖も悪い新造は隼人が家に居るのにも関わらず、女を連れ込み性的な事をしていたと言う
それに耐えきれず、居場所の無くなった隼人は小銭をかき集め何とか電車に乗った
着いた街は殿町
その時の所持金はわずか150円だった
そのお金でハンバーガーを買ったのが最後でそれから三日間何も口にしていなかった
『…だから俺一生忘れないと思います。このオムライスの味』
隼人は話し終わると、間食したオムライスの皿を見つめた
正義がその姿を見て胸が苦しかった
再び話を戻し、自分に出来る事はないかと考える
『……隼人君はどうしたい?』
あえて隼人に意見を求めた
ここで正義が“こうした方がいい”と意見を述べても何の解決にもならない
本人の意見を聞いた上で一緒に解決法を導き出すのが一番良い方法だと思ったからだ