Iの漂流戦士
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あの後すぐに高木功は教室に戻り、倉木も自分の学校へと戻って行った
『今の世の中を知りたいならまず漂流戦士を読め』
この言葉を言い残して
正義にとって倉木は信頼している同志であり、教員の先輩だ
今まで何度も助けてもらったし、倉木のアドバイスは的確だった
でも正義は今日初めて倉木のした行動を理解出来ずにいた
倉木がこの学校に来た理由は中野政彦の黙祷に参加する事ではなく、高木功に会う為だった事
そして生徒に向かって“死んで悲しい?”と聞いた事
その全てが正義には理解出来なかった
確かに倉木も殺人鬼01について調べている事は知っている
その殺人鬼に中野政彦が殺されたのだから正義にとっても他人事ではない
でもそれと漂流戦士の著者である高木功と何の関係が……?
正義は駐車場に停めた車を動かし、睦八代高校の近くのコンビニにまた駐車した
正義の立場上、すぐに高校に戻らなきゃいけないが倉木の言葉がどうも引っ掛かる
“今の世の中を知りたいならまず漂流戦士を読め”
正義は未読の本を持ち歩く癖があり、勿論まだ1ページも読んでいない漂流戦士はカバンに入っていた
本を手に取りエンジンを切った車内でゆっくりとページをめくる