Iの漂流戦士

┗真実、行方





隼人は暗闇に浮かび上がる真ん丸い月を見上げた

錆びたブランコの鎖をギュッと握り締め、言った


『あの日、星野さんに見せた父の顔は嘘です。散らかっていた部屋を一晩で綺麗にしたのは俺で、星野さんを納得させる為に演技していたんです』


“昨日は失礼な事を言って申し訳ありませんでした”

きちんとした服を着て正義に土下座をした新造


“昨日一晩考えました。やっぱり俺が間違っていました。これからは隼人の気持ちを優先して、父親にも母親にもなれる親になります”


そう震えた声で言った姿は全て嘘だった

正義を納得させる為に
早く帰らせる為に


正義は力いっぱい鎖を握り締めた

それを見た隼人は申し訳なさそうに続けた


『俺も口止めされてて、本当の事が言えませんでした。それに逆らったら何をされるか分かりませんし』


あの日隼人は言った

“俺にも分かりませんが、もし変わるきっかけがあったのなら間違いなく星野さんです”


別れ際に言った言葉は精一杯ついた嘘で、隼人の必死の訴えだった


正義はそれに気付く事ができなかった


“もし何かあったらまた訪ねて来てね、絶対だよ”

そんな言葉を言い残し別れた自分を殴りたくなった





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