Iの漂流戦士
『あれから父は仕事も辞めて女の人に貢いでもらってます。だから相変わらず俺の居場所はありません』
『…………』
『実は俺、今少しだけバイトしてるんですよ。学校が終わって僅かな時間ですけど、近所のそば屋さんで』
隼人がこんな時間に制服で居た理由が分かった
本当ならば、中学生でバイトする事は出来ない
しかし、昔からの知り合いという事で周りには内緒で働かせてもらっていた
『早くお金貯めて家を出たいので…でもこうやってビール代に消えていくんですけどね』と隼人は付け加えた
中学生で働く事がどれ程大きな事だろうか?
隼人が必死で働くお金でビールを買って来いと言う新造はやはり救いようがない
こんな環境に居るのだから、みるみる痩せていくのは普通の原理
正義は悔しくて仕方がなかった
『中学を卒業するまでの辛抱と思ってるんですけど、それまでが長くて……』
隼人は苦笑いを浮かべたが、目は全然笑っていない
隼人は現在中学2年生
後1年、されど1年
一日、一日を耐えている隼人にとって一年は永遠とも言える程長い時間だった
全てを打ち明けてくれる隼人を見て、正義は少し“ある事”を思った
半年前は新造の芝居につき合った隼人
それは新造に何をされるか分からないと怯えていたからだ
だからこそ半年の間、正義に連絡の一つすら出来なかった
どんなに苦しくても
それなのに今はこうして全てを話してくれる
そんな隼人に違和感を感じつつあった